第1章

莉央視点

屋上を離れると、針のような冷気が肌を突き刺す。重力が私を引きずり下ろし、一瞬、すべてが無重力になったように感じた。落ちているというより、浮いているような感覚。そして、衝撃がやってきた。

頭がコンクリートに叩きつけられ、頭蓋骨の中で痛みが炸裂する。クリスマスプレゼントが手から弾け飛び、丁寧に包装された箱がアスファルトの上を滑っていく。温かくべっとりとした血が頭の下に広がり、氷のように冷たい地面とは対照的だった。

どこか頭上から、パニックに陥った声が降ってくる。

「俺が突き落としたんじゃない! 誓ってない!」

「お前のせいだ! お前が押したんだろ!」

「ただ怖がらせようとしただけなんだ! こんなことになるなんて!」

遠くでサイレンが鳴り響き、だんだん近づいてくる。私の周りに人だかりができ、その声は驚きと恐怖がないまぜになった雑音と化す。でも、彼らの言葉はまるで水の中から聞いているみたいに、くぐもって聞こえた。

これが、死ぬってことなんだ。闇が視界の端から忍び寄ってくる。なんて冷たい……なんて痛い……

屋上にいるあの子たち、今頃怖がっているだろうな。別に、彼らを責めるつもりはない。もし私が存在しなかったら、すべては違っていたんじゃないだろうか?

意識が遠のき、ふと気づくと、もう凍てついたアスファルトの上にはいなかった。山の上の薄暗い木の小屋にいて、母の腕の中で小さく、安心しきっている。

「莉央、ママの秘密を教えてあげる」ママは闇に響く絹のような声で囁く。私を強く抱きしめ、指先で優しく髪を撫でてくれる。「ママはね、本当は名門の生まれなの。庭とピアノのある豪邸に住んでて……ママは綺麗なドレスを着て、一番いい学校に通ってたのよ……」

この冷たい路上で死にかけている今でさえ、私がどんなに目をキラキラ輝かせていたか覚えている。私はママの手を固く握りしめ、その言葉をすっかり信じ込んでいた。

「本当に、ママ? 私たち、本当にそんな生活ができるの?」

ママの目には涙が光っていたけれど、声は優しいままだった。「ええ、そうよ。約束するわ。いつかママがここからあなたを連れ出して、本当のおうちに帰るの。あなたも可愛いドレスを着て、ピアノを習って、立派なレディになるのよ……」

あの頃の私は、あまりに無邪気だった。一言一句、すべてを信じていた。ママが十五年前の暗い夜に誘拐されたことも、あの化け物と無理やり結婚させられたことも知らなかった。おとぎ話が現実になると信じていた、希望に満ちたただの子供だった。

次の記憶が、波のように押し寄せてくる。すべてが変わってしまった、あの日。私が十五歳の時、ニュースが流れた。

「神山地方からの臨時ニュースです。地元在住の男が、移動販売員の殺害容疑で逮捕されました……」

テレビ画面には、父が映っていた。何年もの間、私たちを恐怖に陥れてきたあのクソ野郎が、手錠をかけられて連行されていく。死刑だ、と誰かが言った。マスコミがイナゴの大群みたいに山間の町に押し寄せ、そして彼らは彼女を見つけた。

「なんてことだ! これは山崎薔子さんじゃないか! 十五年前に失踪した銀行家の娘さんだ!」

みすぼらしい木の家に、高級車が何台も乗り付けた。仕立ての良いスーツを着た男たちが降りてきて、その顔は驚きと嫌悪の仮面を被っていた。

「薔子……ああ、なんてことだ、薔子!」背の高いその男は、母の兄に違いなかった。母が受けたトラウマを差し引いても、面影があった。

でも、ママはただ虚ろな目で震えているだけだった。まるで自分の家族が誰なのかもわからないように。そして私が、親戚であるはずのその見知らぬ人たちの方へ歩み寄ろうとすると、純粋な嫌悪の眼差しを向けられた。

「この娘は誰かね?」と記者が尋ねた。

「彼女は……彼女は、薔子の娘です……」スーツの男は、重く、ためらいがちな声で答えた。

その瞬間、私はおとぎ話がようやく始まるんだと思った。なぜ、家族であるはずのこの人たちが、こんなにも冷たい目で私を見るのか理解できなかった。ただ、私たちはついにあの恐ろしい場所から出られるのだと、それだけを思っていた。

しかし、東都にあるその屋敷は、ママが語ってくれた通り美しかったけれど、別の種類の牢獄に過ぎなかった。

ママは私を見るたびに、制御できないほど震え、涙を流した。医者たちは、私が「トリガー」なのだと言った。彼女の最悪のトラウマを思い出させる、生きた証なのだと。

「あの子を薔子のそばに置いてはおけん」山崎叔父さんが断言した。「薔子の状態を悪化させるだけだ」

「なんであいつが一緒に来たんだよ」義兄の山崎直人が吐き捨てた。「そもそも、本当の家族ですらないくせに!」

私はみんなが食事を終えた後、キッチンで一人で食べた。使用人たちは私のことを名前ではなく「あの子」と呼んだ。私はママからできるだけ遠ざけられ、屋敷の離れで暮らした。

「私……学校に行ってもいいですか?」ある日、私はおずおずと尋ねた。「もう誰にも迷惑をかけないように、自分のことは自分でできるようになりたいんです」

「わかった」山崎叔父さんは、ぞんざいに言った。「薔子を動揺させないように、何かやらせておけ」

ママの家族の元に戻れば、彼女が約束してくれたおとぎ話のような生活が手に入ると思っていた。でも、私は自分が常に存在すべきではない人間なのだと思い知らされた。私の血管にはあの化け物の血が流れていて、そのせいで誰もが私を憎んだ。私自身も含めて。

学校は、それ自体が地獄と化した。私の話が広まるのに、時間はかからなかった。

「知ってる? あいつ、テレビに出てた殺人犯の娘だって!」

「うん! 父親が人殺したんだって! ニュースで大騒ぎだったよ!」

最初は教科書を破られた。次に鞄をゴミ箱に捨てられた。制服には油性ペンで「人殺しの娘」と書かれた。でも、一番ひどかったのは、言葉以上の暴力が始まった時だった。

最初は軽く押されるだけだったのが、次第に蹴られたり殴られたりするようになった。私は痣や切り傷だらけで家に帰り、階段から落ちたと言い訳をした。

「どうしてお前はいつも怪我をしているんだ?」山崎叔父さんは、心配ではなく苛立ちを込めて尋ねた。

「お……落ちたの。階段で」私は嘘をつき、蹴られた肋骨あたりを腕でかばった。

本当のことは言えなかった。彼らはすでに私のことを重荷だと思っている。学校で一家の名に恥をかかせていると知られたら、もっと私を憎むだろう。

毎晩、私は自分の部屋で一人で傷の手当てをし、嗚咽を殺すためにタオルを噛みしめた。

もしかしたら、これがずっと私の運命だったのかもしれない。あの化け物の血を引いている。彼の罪のために苦しむ運命なのだ。学校を卒業して、ママから遠く離れた場所へ行ければ、彼女はもう二度と私を見てあの辛い日々を思い出すことはなくなるだろう。

でも、今夜。このクリスマスの夜。それが私の限界だった。

私は母にプレゼントを作った。小さくて簡素なものだけど、伝えられない愛情をすべて込めて作った。母の部屋の前に置いて、秘密のファンからだとでも書いた手紙を添えようと思っていた。

でも、その屋敷の窓に忍び寄った時、私の心の残りかすを粉々にする光景を見てしまった。

母は暖炉のそばで家族と一緒に座って、笑っていた。本当に、笑っていた。私が一度も聞いたことのない、明るく美しい声。直人や山崎叔父さんと話す彼女の顔は、幸せに輝いていた。

「今年のクリスマスは最高ね」彼女の声は温かさに満ちていた。「やっと、また家族が一つになれた気がするわ」

直人は微笑んで彼女を抱きしめた。「母さん、すごく元気そうだよ。本当の家族が戻ってきたみたいだ」

彼女は、あんなに幸せそうだった。山を降りてから、あんな風に笑う彼女を一度も見たことがなかった。私がいないと、彼女はこんなにも喜びに満ち溢れることができるのだ。

私はプレゼントを胸に抱きしめ、窓から後ずさった。彼女の幸せを邪魔することはできなかった。彼女にはこの平穏と喜びを受ける資格がある。そしてそれは、私がいないことでしか手に入らないものなのだ。

暗い通りを歩いて帰る途中、私は彼らに出くわした。毎日を悪夢に変える、学校の男の子たちに。

「おやおや。人殺しの娘じゃないか。クリスマスの夜に何してんだ? 家族に追い出されたか?」

「だろうな。誰が殺人犯のガキとクリスマスを過ごしたいんだよ」

彼らは私をショッピングセンターまで追いかけ、突き飛ばしたり小突いたりしながら、どんどん上へ、屋上へと追い詰めていった。それはいつもの残酷な冗談、ただの屈辱に過ぎないはずだった。

しかし、一度の突きが次の一突きにつながり、そして私は、落ちていた。

そして今、私はコンクリートの上で血を流し、鼓動ごとに命が滑り落ちていくのを感じている。

こうして、終わるんだ。多分、この方がいい。母は私がいない方が幸せになれる。きっと新しい誰かを見つけて、本当の家庭を築いて、そしてつらい記憶をすべて忘れるだろう。私は、彼女の最悪の悪夢を思い出させる存在でしかない。そして悪夢が消えれば、人はようやくまた夢を見ることができる。

冷気が骨の髄まで染み渡り、視界がぼやける。遠くで救急隊員が到着する音が聞こえるけれど、もう遅すぎるように感じた。あまりに遠い。

「ママ」私は最後の息で囁き、唇に血の味を感じた。「もし次の人生があるなら……今度は私を置いていって。もう追いかけないから……本当に……すごく、痛いよ……」

世界が闇に消え、すべてを手放していくのを感じた。痛みも、孤独も、そして長い間私を支え続けてきた、絶望的な希望さえも。

これで終わりだ.......

次のチャプター